岩瀬孝文の View Point ⑥

写真・文/岩瀬孝文 photo & Text by Yoshifumi Iwase


 『ダイナミックに飛び抜けて』五十嵐彩佳(ガスワンスキーチーム)

大学を卒業後、札幌のガス供給会社に就職して社会人ジャンパーとして堅実な道を歩んでいる五十嵐彩佳(ガスワン)は、もともと福島県の出身で、本格的な女子ジャンプ選手を志し、中学から下川へジャンプ留学。下川商高から札幌大と進学、北の大地での生活は10年以上だ。

「ガスワンは世界規模に会社があります。全国的にみると新潟県にもガスワンの会社があって、その皆さんがここ(石打丸山)にもたくさん応援に来てくれました。それはとても励みになりますね」
澄み渡る青空の下、真正面から明るく輝く陽の光が照りつける塩沢シャンツェを軽快に飛び抜けた。

以前からその持ち前の筋パワーを駆使したパワージャンプが良い個性となっている五十嵐選手だ。そこに爽やかな向かい風が吹きつけると、抜群に飛距離が伸びていく。
「蔵王サマー大会の後に、ジュニア選手達と一緒に合宿をして良い刺激を得ました。もう、負けてはいられないぞ!と、思いを新たにしました」

日頃のトレーニングは、プロ選手として男女精鋭が揃うチームで小川孝博コーチに指導を仰ぐ。
「まだまだ、やることはあります。もともと有するパワーを中心にしても、確かなジャンプテクニックを身につけて、伸びやかに飛んでいくイメージ。本人は、それを充分に考えていると思います」
と小川コーチは目を細める。

社会人選手として出場するどの大会において、ひとつでも順位を上げていこうと1本1本に集中する姿が見られ、気迫すらあふれる。
「アプローチポジションとスタートをケアしています。ジャンプを全体の流れで考えられるようになってから、飛ぶイメージが良くなったんですよ」
この夏、手応えを掴んだ。

「現実的には国内開催のW杯で15番に入ることが目標です。そしてジャンプを2本揃えること。まだ上半身がスキーの下へと入りがちなので、空中で意識しすぎず、力みなく身体にしみこませる流れが、大事なのです」

山は紅葉、冬が近い。
またパワフルにて、明朗快活な笑顔の五十嵐選手が、颯爽と飛んでいく姿が待ち遠しい。


2023年8月、塩沢ジャンプ大会に出場した際の五十嵐彩佳。