写真・文/岩瀬孝文 photo & Text by Yoshifumi Iwase
『実直さながら雪国のJRマン』
三ケ田泰良(JR盛岡スキークラブ)
つねに気合いがみなぎる明大スキー部、そこで紫紺魂とともに技術を研鑽した三ケ田選手は、岩手出身のノルディック複合選手として活躍、卒業後はJR東日本に勤務していた。
「練習は、主に仕事の後にランニングをしていたりしていました。それは初任地の青森で。冬は隣町の大鰐スキー場まで通い、クロスカントリースキーで走っていました。あとは筋トレなどですかね。もちろん学生時代よりも練習時間が少なくて、その分、集中して効率よく進めるようにしていました」
配属されたJR弘前駅(青森県)では、基本業務を学びながら改札を務めていた。それはもう制服が良く似合うフレッシュな駅員であったようだ。
そして冬になると仕事明けに熱心に雪上トレーニングを施し、地元岩手の田山国体に出場。
父の礼一さんは冬季五輪の複合金メダリスト(東奥義塾高→明大→リクルート)で、現在は岩手県において全国的にも画期的なスポーツキッズ育成を手掛けて県内をくまなく展開。現役選手でW杯個人総合優勝を遂げ、さらに北京五輪金メダリストの小林陵侑(盛岡中央高→土屋ホーム→チームROY)を輩出。それぞれの才覚に合わせた育成指導で、子供達の才能を開花させた、岩手が誇る敏腕な指導者である。
小さな頃から、その偉大な父の背中を追いながらの競技生活であり、追いつきたくともなかなか追いつけないジレンマなどで、スランプ的な時期もあったりした。が、それは元来の真面目な性格で乗り切り、楽しみながらノルディック複合に勤しみ、地元に貢献する道を選択、いまでもにこやかに競技を続けている。
「もっと、ジャンプの本数をこなしたいですね。体力を維持しながら、より良い走る筋力をつけていきつつ。ときに焦りそうになりますが、いいえ、焦ることなくですね!」
夏場の札幌サマー大会では試合に出場しておらず、どうしたのかなと心配したが、秋口の鹿角サマージャンプ大会では大らかに飛び抜け、ランディングバーンで爽やかな笑顔が見られ、なんだか心が和んだ。
いまは盛岡駅でのタイトな仕事柄、練習時間が少なめになるのが、もどかしいらしくあり、それでも大好きなノルディック複合をひたむきに続けている。
近頃は東北新幹線の車掌業務をこなすまでになった。なので、一度でもいい、その新幹線に切符を買い求め乗車してみたいものだ。ビール1缶と三陸はらこ飯をほおばりながら、静かに車窓、北東北の田園風景を眺め。そこにたまに、居眠りしている自分が見えるようだが。
若き三ケ田車掌に『お客さん、終点の盛岡へ着きましたよ』などと、声をかけられて。そのようなじつに微笑ましいイメージが膨らんでくる…。
仕事とスキーとを立派なまでに両立させている彼こそ、後進のスキー選手たちの素晴らしい模範となるであろう。
2023年10月、秋田県鹿角市でのサマージャンプ大会に参戦した際の三ヶ田泰良